LANSCOPE/Apex One導入の現場|40名規模で学んだ5つの教訓

セキュリティ刷新プロジェクトで見えた現場のリアル

LANSCOPE/Apex One導入の現場|40名規模で学んだ5つの教訓

エンドポイントセキュリティの強化は、もはや「やったほうがいい」ではなく「やらなければならない」施策になりました。中堅企業のIT担当者なら、経営層から「うちのセキュリティは大丈夫なのか」と問われた経験があるはずです。私も2025年5月から11月にかけて、まさにその問いに向き合うプロジェクトを担当しました。

40名規模の情報系システム更改プロジェクトで、LANSCOPEとApex One(Apex Central含む)を中心としたエンドポイントセキュリティ環境を一から構築したのです。PMOとして設計から運用定着まで関わり、改めて痛感したのは「製品選定よりも、現場に根付かせるほうがはるかに難しい」という現実でした。

カタログスペックを比較して決めるのは、実は最も簡単な工程です。本当の勝負は導入後に始まります。ユーザーから「重くなった」と言われ、現場から「誤検知が多すぎる」と不満が上がり、運用担当者が「アラートが多すぎて対応しきれない」と悲鳴を上げる。これが、エンドポイントセキュリティ導入の現実なんですよね。

製品選定会議で見えなかった本質

プロジェクト開始当初、社内には既存のウィルス対策ソフトがバラバラに導入されていました。部署ごとに違う製品、バージョンもまちまち、中には更新が切れたまま放置されている端末もある。典型的な「成り行き管理」の状態です。

経営層からの指示は明確でした。「最新のセキュリティ環境に刷新せよ」。そこで候補に挙がったのが、LANSCOPE、Apex One、Microsoft Defender for Endpoint、CrowdStrikeといった製品群でした。機能比較表を作り、ベンダーのデモを受け、提案書を並べて検討する。一見、合理的なプロセスに見えます。

しかし私が30年の経験から知っているのは、この段階で見えているのは製品の姿の半分以下だということです。もう半分は、導入後に初めて見えてくる。具体的には、既存システムとの相性、ユーザーの業務への影響、運用担当者の負荷、そして何より「現場が受け入れるかどうか」です。

導入初日に起きた想定外

2025年5月から11月にかけて、私はPMOとして情報系システム更改プロジェクトでLANSCOPE、Apex One、Apex Centralの導入を担当しました。体制40名、規模は中堅企業のIT資産1,000台超。当初の予定は『既存ツールから入れ替えるだけ』でしたが、運用開始してから次々と現場の課題が見えてきました。LANSCOPEの詳細な操作ログ取得機能は強力でしたが、現場担当者が『監視されている感覚が強い』という不満を訴えてきました。Apex Oneのアラート設計も、最初は過剰検知が多発し、IT部門が対応に追われる事態に。ルール調整に2ヶ月かけて、ようやく安定運用に入れました。エンドポイントセキュリティは『導入が終わり』ではなく『運用設計こみ』で考えないと、現場の不満を生むだけだと改めて感じました。

この経験から学んだのは、エンドポイントセキュリティは「入れたら終わり」ではなく「入れてから始まる」ものだということです。カタログに書いてある機能がすべて使えるわけではありません。現場の業務フロー、既存システムとの相性、ユーザーのITリテラシー、運用体制のキャパシティ。これらすべてを考慮した上で、初めて「使えるセキュリティ」になるのです。

現場が抱えていた本当の課題

プロジェクトを進める中で見えてきたのは、表面的な「セキュリティ強化」の裏にある、もっと深い課題でした。営業部門では「客先訪問中にPCが重くてプレゼンできない」という声があり、経理部門では「月末の処理中にスキャンが走って作業が止まる」という不満がありました。

IT部門(といっても2名体制)は、日々のアラート対応に追われていました。「このアラートは対処すべきなのか、誤検知なのか判断できない」「ベンダーに問い合わせても回答が遅い」「結局、現場からの問い合わせ対応で手一杯」という状態です。

つまり、必要だったのは単なる「新しいセキュリティ製品」ではなく、現場の業務を止めず、運用担当者の負荷を増やさず、それでいてセキュリティレベルを上げる「仕組み全体」だったのです。この認識に至るまでに、プロジェクト開始から2ヶ月かかりました。

なぜエンドポイントセキュリティは現場に根付かないのか

30年間、さまざまなIT導入プロジェクトに関わってきて分かったのは、セキュリティツールが現場に根付かない理由には明確なパターンがあるということです。それは製品の性能の問題ではなく、導入プロセスと運用設計の問題なんです。

「守る側」と「使う側」の視点のズレ

エンドポイントセキュリティ製品は、基本的に「守る側」の視点で設計されています。EDR(Endpoint Detection and Response)という言葉が象徴的ですが、これは「脅威を検知して対処する」という管理者目線の機能です。

一方、現場のユーザーにとっては「自分の仕事を邪魔しないでほしい」が本音です。朝一番でPCを立ち上げたらスキャンが始まって10分待たされる、USBメモリを挿したら警告が出て使えない、クラウドストレージへのアップロードが制限される。これらはすべて、セキュリティ上は正しい挙動ですが、ユーザー体験としては「邪魔」なのです。

私が金融系システムの開発に携わっていた頃、セキュリティルールは絶対でした。USBポートは物理的に封鎖、インターネット接続は制限、すべてのファイル持ち出しは申請・承認が必要。しかしそれは、セキュリティインシデントが経営に直結する業界だからこそ成立した厳格さです。

中堅企業で同じレベルの制限をかけたら、現場は回りません。かといって緩すぎれば、セキュリティインシデントのリスクが跳ね上がる。このバランスをどこに置くかが、エンドポイントセキュリティ導入の最大の難しさなのです。

運用体制が想定されていない導入

もう一つの大きな問題は、導入時に運用体制が具体的に設計されていないケースが多いことです。「製品を入れれば自動的にセキュリティが強化される」という誤解があるんですよね。

実際には、エンドポイントセキュリティ製品は日々大量のログとアラートを生成します。Apex Centralの管理コンソールを見れば分かりますが、1日で数百件のイベントが記録されます。その中から「本当に対処すべき脅威」を見極め、適切に対応するには、相応のスキルと時間が必要です。

中小企業のIT部門は、大抵2〜3名体制です。その人たちは、エンドポイントセキュリティ専任ではありません。ネットワーク管理、サーバー管理、ユーザーサポート、システム開発の調整など、複数の役割を兼任しています。そこに「毎日アラートをチェックして対応する」という業務が加わったら、パンクするのは目に見えています。

だからこそ、製品選定の段階で「うちの運用体制で回せるか」という視点が必要なのです。高機能なEDRを導入しても、アラートを見る人がいなければ、無防備な状態と変わりません。むしろ「守られている」という錯覚が生まれる分、危険かもしれません。

既存環境との共存問題

今回のプロジェクトで最も時間がかかったのが、既存環境との共存設計でした。40名規模といっても、使っているシステムは多岐にわたります。基幹システム、グループウェア、営業支援ツール、会計ソフト、CADソフトなど。それぞれに動作要件があり、セキュリティソフトとの相性問題があります。

特に厄介だったのが、古い業務システムとの共存です。開発元がすでにサポートを終了しているが、業務上どうしても使い続けなければならないシステム。最新のエンドポイントセキュリティ製品は、そういった古いプログラムを「脅威」と誤認することがあります。

除外設定を入れれば動くようになりますが、それはセキュリティホールを開けることでもあります。「業務を止めない」と「セキュリティを守る」の間で、細かな調整を繰り返す。これが導入プロジェクトの実態でした。

2025年のエンドポイントセキュリティ、現場目線の選び方

実際にプロジェクトを通じて製品を選定し、導入し、運用を回してみて、私なりの判断軸ができました。カタログスペックではなく、現場で本当に使えるかどうかという視点です。ここでは、今回採用したLANSCOPEとApex One、そして検討した他製品について、30年の経験と直近の導入経験から語ります。

LANSCOPEを選んだ理由と実運用での評価

LANSCOPEは、エンドポイントセキュリティというよりも「IT資産管理+セキュリティ」という位置づけの製品です。私たちがこれを選んだ最大の理由は、PC管理の基本機能が充実していることでした。

中堅企業のIT部門が最初に困るのは「誰がどのPCを使っているか分からない」「ソフトウェアのライセンス管理ができていない」「OSやアプリケーションのバージョンがバラバラ」といった基本的な管理の欠如です。セキュリティ対策の前に、まずこの基盤を整える必要があります。

LANSCOPEの管理画面では、全端末のハードウェア情報、インストールソフトウェア一覧、OSのパッチ適用状況が一目で分かります。これが実運用でどれだけ助かったか。例えば、あるソフトウェアの脆弱性が公表されたとき、「どの端末にそのソフトがインストールされているか」を即座に把握できました。以前なら、全部署に問い合わせて、回答を集約して、という作業に数日かかっていたことが、数分で完了します。

またUSBデバイス制御機能も、現場の反発を最小限に抑えながら導入できました。全面禁止ではなく、承認制にする。申請から承認までのフローをLANSCOPE上で完結させる。こういった柔軟な運用ができる点が、中堅企業には向いていると思います。

ただし、LANSCOPEだけでは高度な脅威への対応は難しいです。あくまでも「管理とポリシー適用」が主機能であり、リアルタイムの脅威検知・対処という面では、専用のEDR製品には及びません。だから私たちは、これを「基盤」として、その上にApex Oneを載せる構成にしました。

Apex OneとApex Centralの実践的な使い方

Apex Oneは、トレンドマイクロのエンドポイントセキュリティ製品です。以前のウイルスバスター コーポレートエディションの後継にあたります。私たちが採用した理由は、実績と日本語サポートの充実、そして既存環境との相性の良さでした。

特に重要だったのが、Apex Central(管理サーバー)の存在です。これがあることで、全端末のセキュリティ状態を一元管理できます。パターンファイルの更新状況、スキャン実行状況、検出された脅威の履歴などが、ダッシュボードで可視化されます。

導入当初は、この管理機能をどこまで使いこなせるか不安でした。実際、機能は豊富ですが、それゆえに設定項目が多く、初期設定には時間がかかりました。しかし、一度ポリシーを整備してしまえば、日常運用はそれほど負荷がかかりません。

私たちが工夫したのは、ポリシーを部署別に分けたことです。営業部門には比較的柔軟なポリシー、経理部門には厳格なポリシー、といった具合です。全社一律のルールにすると、必ず現場から不満が出ます。業務内容に応じた柔軟性を持たせることで、セキュリティと業務効率の両立を図りました。

また、スキャンスケジュールの調整も重要でした。デフォルト設定のまま使うと、業務時間中にフルスキャンが走ってしまうことがあります。私たちは、昼休みと定時後の時間帯にスキャンを集中させ、業務への影響を最小化しました。こういった細かな調整が、現場の受け入れを左右するんですよね。

他製品との比較で見えた選定軸

今回、Microsoft Defender for EndpointとCrowdStrikeも候補に挙がりました。それぞれ一長一短があり、最終的には「うちの組織に合うか」という視点で判断しました。

Microsoft Defender for Endpointは、既にMicrosoft 365を使っている組織なら統合管理できる点が魅力です。追加コストも比較的抑えられます。ただし、管理インターフェースが全て英語(一部日本語化されていますが不完全)で、中小企業のIT担当者には敷居が高いと感じました。私自身は問題ありませんでしたが、将来的に担当者が変わったときのことを考えると、日本語で完結する製品のほうが安心です。

CrowdStrikeは、EDRの機能としては最高レベルです。AIによる脅威検知、クラウドネイティブな設計、軽快な動作。技術的には申し分ありません。しかし、運用するには相応のスキルが必要です。検出されたアラートの内容を理解し、適切に対処するには、セキュリティの専門知識が求められます。2名体制のIT部門では、正直オーバースペックだと判断しました。

私が30年の経験から学んだのは、「最高の製品」と「うちに合った製品」は違うということです。高機能なツールを導入しても、使いこなせなければ意味がない。むしろ、運用負荷が上がって現場が疲弊する。だから選定の軸は、機能の豊富さではなく「うちの体制で運用できるか」に置くべきなのです。

30年現場にいた私が思うこと

このプロジェクトを通じて、改めて実感したことがあります。それは、エンドポイントセキュリティは「技術」の問題である以上に「人と組織」の問題だということです。

完璧なセキュリティは存在しない

30年前、私がプログラマーとして働いていた頃、セキュリティといえばウイルス対策ソフトを入れることくらいでした。それが今では、EDR、ゼロトラストネットワーク、多要素認証、SIEM、SOCといった専門用語が飛び交う世界になっています。

技術は進化しましたが、完璧なセキュリティは今も存在しません。どんなに高度な製品を導入しても、100%の安全は保証されない。それは金融系の厳格なシステムでも同じでした。だからこそ、「多層防御」という考え方が重要なのです。

LANSCOPEで基本的なPC管理とポリシー適用をする。Apex Oneでウイルス・マルウェア対策をする。そしてそれ以上に重要なのが、ユーザー教育です。どんなに強固なセキュリティ製品を入れても、ユーザーが怪しいメールを開いてしまえば、そこで終わりです。

今回のプロジェクトでは、製品導入と並行して、全社員向けのセキュリティ研修を実施しました。「なぜこのルールが必要なのか」「どんな脅威があるのか」を、現場の言葉で説明する。これが、技術的な対策と同じくらい重要だと思います。

中小企業だからこそできること

大企業と違って、中堅企業にはリソースの制約があります。専任のセキュリティ担当者を置けない、高額な製品を導入できない、24時間365日の監視体制を作れない。こういった制約は、確かに存在します。

しかし、中小企業には大企業にない強みもあります。それは、意思決定の速さと、組織の柔軟性です。今回のプロジェクトでも、ポリシー変更が必要になったとき、現場と直接話し合って、その場で決めることができました。大企業なら、稟議を上げて、会議を重ねて、数週間かかるようなことが、数時間で決まる。

この機動力を活かせば、限られたリソースでも効果的なセキュリティ体制を作れます。完璧を目指すのではなく、現実的なレベルで「やるべきことはやっている」状態を作る。そして、脅威が変化すれば、素早く対応を変える。これが中小企業のセキュリティ戦略だと私は思います。

明日から始められる小さな一歩

もしあなたが、今エンドポイントセキュリティの強化を検討しているなら、まず現状把握から始めてください。全社でPCが何台あって、それぞれにどんなセキュリティソフトが入っていて、最終更新日はいつか。これをExcelでいいのでリスト化してみてください。

その作業をするだけで、自社のセキュリティの実態が見えてきます。バージョンがバラバラだったり、更新が止まっている端末があったり、おそらく想像以上に管理できていない現実に直面するはずです。でもそれでいいんです。現実を知ることが、改善の第一歩ですから。

次に、IT部門の運用負荷を見積もってください。現在の業務で手一杯なのに、高機能なEDRを入れても回りません。まずはLANSCOPEのような管理ツールで基盤を整え、運用が安定してから、段階的に高度な製品を検討する。この順序が、現場を疲弊させない導入の鉄則です。

セキュリティは、一度導入したら終わりではありません。脅威は日々進化し、組織も変化します。だからこそ、持続可能な運用体制を作ることが、何より重要なのです。

私が40名規模のプロジェクトで学んだのは、結局「人が回せる仕組み」でなければ、どんな製品も機能しないということでした。カタログの機能リストを眺めるのではなく、運用している自分たちの姿を想像する。そこから始めてみてください。きっと、あなたの組織に本当に必要なものが見えてくるはずです。

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